高校生の頃だったか
あれは冬の日が暮れた6時ごろだったと思う
バス停から帰路に着いた私は
家への15分を急いでいた
近視だったが、
その日はメガネもコンタクトもしていなかった
街灯の途切れた道を歩いていると
脇道から
「おい」と声をかけられた
振り向いたが暗がりで近視で
よく見えない
突然その男がコートを開けた
露出狂だった
が、私はよく見えずに
なんと近づいて
覗き込んでしまった
そしてやおら気がついた
踵を返して
何事もなかったかのように
スタスタと歩いてかえったが
心臓が口から飛び出しそうだった
でもその男も
きゃーもなく
覗き込んだ女にぞっとしたかもしれない
足音は夜の恐怖の効果音 毛利由美