川柳小噺

エッセイをまとめたら17音になった

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父の好きだった人

父は18年前

 

 

70歳で他界した

 

 

母と2人の娘の中で1人

 

 

男をしていた

 

 

不器用なくせに

 

 

力仕事となると前に出て

 

 

失敗しては家族から顰蹙を買うことが

 

 

多々あった

 

 

重い水屋を移動させるのに中の食器をのけずにやって

 

 

お皿を割ってしまったり

 

 

扇風機の簡単な分解掃除も

 

 

何を思ったか

 

 

ふろ場で頭から水をぶっかけたり

 

 

そんな父も

 

 

定年になり

 

 

認知症の祖母と同居を決め

 

 

母と二人三脚の介護生活にはいる

 

 

当時は「介護」に手厚い世の中ではなかった

 

 

30年近く前の

 

 

今でいう老老介護

 

 

母は頑張り

 

 

父は会う人人に母をほめた

 

 

「淑子はようやってくれとる」

 

 

母はその言葉を力に替えているように思えた

 

 

その祖母も大往生し

 

 

お通夜は心なしか明るかった

 

 

久々にお酒が入った父は機嫌が良くなり

 

 

言ってはいけないことを言ってしまった

 

 

いつも母を褒めていた父を親戚が褒めた時

 

 

>いやあ、ああ言わんと出ていくと思うてな

 

 

照れ隠しもあったのだろう

 

 

もちろんお酒が本音を引き出したのも確かだろう

 

 

その後しばらく

 

 

母は父と言葉を交わさなかった

 

 

母にしてみても

 

 

一生懸命してきたことが

 

 

全否定されたように感じたに違いない

 

 

そんな不器用を絵にしたような父にも

 

 

好きな女優がいた

 

 

八千草薫さんだった

 

 

亡くなったニュースをみて

 

 

あの日の父が蘇った

 

 

きょう図書館で八千草薫さんの本を借りた

 

 

『まあまあふうふう。』

 

 

表札で母を守ってくれる父                            毛利由美

 

 

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