むかし、雷鳴が怖かった
雷が鳴ると押し入れに入ってふるえていた
そのうち耳をふさぐことを覚え
いつしか恐怖は消えていった
雷が鳴っているとき、木の近くにいると危ないという
子どもが小さかったころ、周りは官舎で遊び放題だった
夕方、雷鳴が聞こえベランダから子どもの姿を探したら
大きなどんぐりの木の下に伏せていた
自殺行為とはこれだ
慌てて家に呼び戻した
そのどんぐりの木も今は伐採され
新しい家が立ち並んでいる
雷鳴に木から飛び出す雨宿り 毛利由美