川柳小噺

エッセイをまとめたら17音になった

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テムカ君

新聞をめくっていたら地方版に

 

 

見た事のある顔が飛び込んできた

 

 

これって・・

 

 

本文を読んでみると

 

 

やっぱりテムカ君だ

 

 

研究者だったお父さんが

 

 

つくばでの思い出を綴った小説

 

 

「手中のハンドボール

 

 

これを自費出版した記事で

 

 

家族写真が載せられていたのだ

 

 

本の主人公はテムカ君

 

 

彼は長男の同級生で小学校からの友達

 

 

一度彼と長男を私の運転する車に乗せたことがある

 

 

多分高校受験がらみで乗せたのだと思うが

 

 

その経緯は覚えていない

 

 

その頃の私はまだ

 

 

運転も近場しかしたことがなく

 

 

多分夫も出張か何かで不在だったのだろう

 

 

私が運転するしかない状況だった

 

 

テムカ君は中学生だったが

 

 

グルジア出身の彼は大人の体格だった

 

 

運転をしながら嫌だなと思う場所が近づく

 

 

Uターンをするところだ

 

 

車はプレザージュというガタイの大きいもので

 

 

切り返しがいるかもなあと思っていたら

 

 

後部座席のテムカ君が身を乗り出して

 

 

>もっと前に出てー

 

 

>もう少し前、前、前・・・

 

 

>はい、大きくハンドルを切って!

 

 

大人のような彼の号令にまんまと乗せられた私は

 

 

大きくハンドルを右へ!

 

 

なんと切り返しもなく一発でUターンを決められ

 

 

運転をしているのは私なのに

 

 

すごいねー、テムカ君、すごい!

 

 

とはしゃいでいた

 

 

彼はこんな些末な出来事は覚えていないだろうが

 

 

私のテムカ君の思い出はこれに尽きる

 

 

当時からリーダーシップがあったのだろう

 

 

今テムカ君は

 

 

ジョージア臨時大使に就任し

 

 

先日の天皇陛下の即位儀式にも出席したという

 

 

彼のことはTwitterなどでも話題になっていたことを

 

 

そんなことを何も知らない同僚から

 

 

何かの折に聞いて知った

 

 

新聞にはほっこりとした記事もある               毛利由美

 

 

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