>毛利さんどうぞ
看護師さんがドアを開けて私を招き入れた
まだ若かりし日のこと
その日は精密検査の結果を聞きに行く日
初めて行ったその総合病院で
ドキドキしながら医師の前に座った
結論は
>様子を見ましょう。お疲れ様でした。
ほっとして席を立ち医師に一礼して
スタスタとドアへ向かう
安堵の顔でドアレバーを持ち
引っ張ったが開かない
押しても開かない
バリアフリーの言葉もない時代
私の辞書に「洋室の引き戸」はなかった
ひとり押したり引いたり
ガタガタしていたら
看護師さん(当時は看護婦さんだった)が
いとも簡単にレバーを引いて
ドアを開けてくれた
若かった私は
安堵と照れ笑いの入った変な顔で
へこへこしながら病室を出た
その後もしばらくその変顔は付着していた
良性か悪性か待つ2週間