川柳小噺

エッセイをまとめたら17音になった

小さな物語

近くの四つ辻の一角に住んでいた

 

 

ひとり暮らしのおばあさんが亡くなり

 

 

しばらく売り家で出していたが

 

 

買い手が見つからなかったのか

 

 

解体して更地となったのが去年の夏

 

 

その後放置したまま秋となり

 

 

更地に雑草が生い茂ってぼうぼうとなった

 

 

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昨年暮れ、ゴミ出しにその前を通ったら

 

 

30代と思しき男性が

 

 

小さなカマを持って途方に暮れたように佇んでいた

 

 

その日から毎朝

 

 

彼はぼうぼうの草を少しずつ刈って

 

 

年末には地肌が見えるまでになった

 

 

その頃から彼は2人の子どもをたまに連れてきた

 

 

5歳、3歳くらいの男の子だ

 

 

彼が草を刈る間

 

 

子どもたちはスコップで土と遊んでいた

 

 

その日の仕事が終わったら

 

 

彼は子どもの靴裏をきれいに拭いていた

 

 

丁寧でいいお父さんだなと感心した

 

 

そして2週間ほど経ち

 

 

元通りのきれいな更地に戻って彼は姿を消した

 

 

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年齢から見て彼は亡くなったおばあさんの孫だろう

 

 

おばあさんが存命の頃は

 

 

楽しいおばあちゃん家だったのではないか

 

 

そんなことを思いながらゴミ出しに行くと

 

 

更地の前に図面を持った男性が女性に説明していた

 

 

売れたのかな♬︎♡

 

 

結果オーライ

 

 

なんだか気持ちが温かくなった

 

 

家がなくなっても思い出は残る

 

 

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